世界遺産アカデミーユネスコスクール
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世界遺産学習に取り組むユネスコスクール事例

世界遺産学習に取り組むユネスコスクールの事例をインタビューしました。

奈良の「世界遺産」を題材に、人権・いのち・平和への理解を深めたい

奈良の「世界遺産」を題材に、人権・いのち・平和への理解を深めたい

ユネスコスクールに参加したきっかけと世界遺産学習の内容について教えてください。

ESDの視点を取り入れた世界遺産教育については、3年ほど前から奈良市教育委員会が音頭をとってプロジェクトを進めていました。その影響もあり参加することにしたわけですが、改めて考えてみれば、三笠中学校のまわりには世界遺産をはじめとするすばらしい文化財がたくさんあります。世界遺産学習はそのまま地域遺産学習となり、地元を愛する心の育成につながり、ユネスコスクールの理念とも結びつくのではないかと思ったのです。

具体的には、3年生の選択社会に「世界遺産学習」を導入。「奈良を知ろう」をテーマに、地域の人々が大事にしてきたものと、その思いに気づくことをめざしました。次のステップとして、自分にとって大切な地域遺産について考えてもらいました。夏休みの宿題に「私の世界遺産」をレポートにまとめるという宿題を出したところ、実にいろいろなものがあがってきたんですよ。

水泳をしている生徒はなくなってしまった県営プールのことを書き、祖父がつくったお地蔵さんが都市開発のために撤去されてしまい、どこにあるのかを調べたいという子もいました。ほかにも「甲子園を残したい」というレポートなど、本当に幅広い内容でした。

続いて「平和と世界遺産」というテーマで、映画『地雷を踏んだらサヨウナラ』を鑑賞し、アンコールワットや地雷について学習。10月はフィールドワークを実施して鹿の角きりや能・狂言のこと、そういった仕事に携わる人々が社会的にどんな立場だったのかを知ることで人権学習にも関連づけていきました。

「世界遺産学習」は、生徒たちに大好評だったとか?

奈良の「世界遺産」を題材に、人権・いのち・平和への理解を深めたい
「世界遺産学習として、どんな切り口があるか。今後は先生方からもいろんなアイデアが出てくるでしょう。地道に続け定着させていきたいと思っています」
(松本先生=右、深澤先生)

明治の廃仏毀釈によって多くの文化財が失われたことや、フェノロサが「奈良はローマだ」と言って文化財保護の重要性を説いた話なども出てきて「子どもたちには難しすぎるかな?」と思いました。が、実際は非常に興味をもって聞いてくれたのです。選択科目の中でも人気が高く、2クラスに分けなければならないほどだったんですよ。

世界遺産学習を取り入れてよかったと思うのは、自分たちの足元を見直すきっかけになったことですね。奈良で生まれ育ったといっても、子どもたちはあまり地元のことを知りません。東大寺は2度再建されていますが、その際にリーダーとして采配を振るったのは大陸からの渡来人であることや、「文化財があるから、奈良には空襲がなかった」と信じ込んでいるけれど、実は機銃掃射があり死者も出たということなど、知らないことが山ほどあるのです。

そういった歴史を知ることで平和の大切さを考えたり、「自分たちはすごいところに住んでいるんだ」と少しでも感じてもらうことができたのではないかと思っています。

今後はどんな取り組みを考えておられますか?

実際のところ、まだ手探り状態なんです。総合学習が減る中で、どう組み込んでいくかも課題。従来より取り組んできた総合のキャリア教育や道徳のカリキュラムの中に、「世界遺産学習」というしっかりとした柱を立てていきたいと考えているところです。

子どもたちにとって身近な地域教材を見つけ、開発していくためには社会科だけではなく全教科での実践も欠かせません。たとえば、唐招提寺は井上靖さんの小説「天平の甍」に登場するので国語教材になりますし、絵画や彫刻については美術の領域。理科では奈良公園の大きなクスノキを題材に環境教育ができそうです。

ほかにも、人権や平和、いのちなど、私たちが取り組みたいと思っているさまざまなテーマとも関連づけられるのが世界遺産学習のすばらしい点。世界遺産学習を盛り込んだESDカレンダーをつくり、年間計画として取り組んでいくつもりです。

(2010年5月現在)

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