玄関を開けたら、一歩も出たくないくらいの大雨だったのに、歩いて5分ほどのユネスコ本部につくころにはきれいに晴れていて、本当に変な天気です。パリの最低気温は14度だそうで、朝起きて開けた窓からの風はかなりひんやりしていました。
3日目(本会議の審議としては2日目)の今日は、世界遺産センターの活動と世界遺産委員会の決議に関する各国のコメントの続きから始まりました。本当はこれは昨日の午前中に終わっているはずの議題です。
委員国から始まる昨日の各国のコメントでは、まず最初にイタリア代表が自国の声明とは別に、ロシアのウクライナ攻撃を非難する43カ国の共同声明を読み上げるところから始まりました。ウクライナの人々のアイデンティティや歴史、記憶、文化遺産を消し去ろうとする蛮行で、ロシアが支配するウクライナのクリミア半島の遺産の保全状況報告が出されていない点も問題であるとしています。またウクライナはコメントで、危機遺産の保護の手続は、紛争地域であったり他国に占領されている状態では機能していないのではと訴えます。
それに対してロシアが自国のコメントの中で、西側諸国が世界遺産委員会を政治的な目的を達成する場として利用していて、ロシアのインフラを破壊し、子供を含む多くの民間人の犠牲者を出している国から非難を受けるのはおかしいと、憮然とした表情でコメントします。そして、「ロシアの」クリミア地域にある遺産の保護を心配しているようですが、万全な保護が行われていますと付け加えました。
昨日はここまで、ロシアのウクライナ侵攻を非難するコメントは出るのですが、ガザやイランの問題を非難するコメントはなく、またロシアは孤立しているような印象でした。
それが、今日はパレスチナ代表のコメントがあり、パレスチナの地は歴史的、文化的に非常に重要であるだけでなく、今そこで暮らす人々にとっても重要であり、そのパレスチナはガザを含めて言語や文化、歴史、記憶を失う危機にある、と訴えます。その後、イスラエルがパレスチナの政治的な発言を非難するコメントをして自分たちは世界遺産条約を非常に尊重しているとコメントし、互いに自国の主張を一方的にする国際会議らしい姿でした。なぜなら、パレスチナやイスラエルの後にコメントする国が特にその話題を拾うわけでもないのですから。ただ、キューバだけは別でしたが。
その後の諮問機関の報告に関するところでも、ウクライナがロシアに侵攻されている状態での文化財の保護のシステムの実効性を問題視し、コメント後に拍手が起こったのと、パレスチナ問題は扱いが全く違う感じがしました。ウクライナ問題は、国としての態度を表明しやすいのだと思います。態度を表明しやすいところだけ言うっていうのもおかしな話ですが、国際政治は綺麗ごとでは進まないですからね。
今日も時間通りにお昼になりましたが、昨日の午後の議題の半分もまだ終わっていません。
午後も、諮問機関の報告への各国のコメントの続きがあり、その後は持続可能な開発に関する報告があり、それに対する各国のコメントがあり、続いてアフリカの世界遺産の登録と保護、キャパシティ・ビルディングの強化に関する報告と、また各国のコメントがありました。各国のコメントが延々と続き、スケジュールが進まないため、スケジュール変更をして保全状況報告の審議に移る案も出ましたが、インドが反対したためそのままとなりました。
そして本会議の審議2日目が終わりましたが、初日の議題がまだ終わっていないという状況です。世界遺産条約の性格上、締約国各国がコメントをするのを止めることはできないのでしょうが、時間制限以外の何かルールを決めないと、スケジュールは遅れ続けることになりそうです。ほとんどの国が時間制限を守らずに、議長が何度も「時間を守ってください!」と訴えるような状況ですから。
危機遺産の保全状況の報告は、明日には始まると思います。いよいよ、皆さん注目の議題に入っていきます。
(2025/07.08、パリ)