今日は朝から気持ちよく晴れています。それでも最低気温は13度とのことで、朝6時ころの窓から入る風は、かなりひんやりしていました。
会議はまず、各国のコメント時間と今後のスケジュールに関する話から始まりました。まず議長から、かなり審議が遅れており絶対的に時間が足りないため発言時間を、委員国は2分、それ以外の参加者は1分とする提案があります。しかし、インドがすぐにそれでは十分な議論にならないとして、委員国3分の発言時間の維持を求めました。このインド代表の方は、前回の世界遺産委員会の議長を務められたヴィシャール・V・シャルマ氏です。インド代表の発言にギリシャやカザフスタンなども賛同したため、オットーネ文化担当事務局長補佐が経済的にもナイトセッションはできないことや決定に関する手続き規則に関する説明をし、最終的に委員国3分、それ以外の参加者1分で落ち着きました。
でも遅れているのに、会議自体は10分ほど遅れて始まり、午後の会議も15分以上遅れて始まるのだから面白いですよね。発言時間を決める話し合いだけで10分以上やっていたし。
最初は昨日からの続きの、アフリカの世界遺産の強化に関する議題からです。ここでは、今年の5月に日本とフランスの支援を受けてケニアのナイロビで開催されたアフリカの文化遺産に関する国際会議で出された「ナイロビ宣言」の採択に関して議論が行われました。
アフリカの文化遺産の保護とその真正性に関する「ナイロビ宣言」を決議するとする国と、「真正性に関する奈良文書」は5年ほどかけてまとめたのだから「ナイロビ宣言」も議論を続けていくべきだという国で意見が分かれ、最終的には「決議」ではなく「支持する」という文言を用いる方向性でまとめられることになりました。この議題についてはまだ結論は出ていません。
続いて、小さな諸島の開発途上国(SIDS)に関する議題で、そうした国々は気候変動や災害、海洋汚染などの被害を受けやすいため保護の強化が報告されました。SIDSには39カ国の35の遺産が含まれ、そのうち危機遺産には2件入っています。また暫定リストには102件あるそうなので、保護の体制強化は必要です。
ここからようやく、危機遺産リストに記載されている遺産の保全状況報告に関する議題に入りました。
今回の世界遺産委員会では、56件の危機遺産を含む248件の遺産の保全状況報告が審議されます。今回は保全状況報告書の提出が求められている遺産の97.5%が提出したということで、非常によい状況でした。その中でやはり、紛争による危機が増えてきており、危機遺産に登録されている遺産の約半数が紛争が原因であり、特に紛争に関するものが多いアラブ地域では25年以上危機遺産リストに記載されている遺産が24件もあるとのことでした。
全体の報告の後に、個別の保全状況報告の審議に入るのですが、ほとんどの遺産は世界遺産委員会での審議は無しで、世界遺産センターと諮問機関の決議が承認されます。
今日、コメントのみも含め審議された危機遺産は、マダガスカルの『アツィナナナの熱帯雨林』と、ウズベキスタンの『シャフリシャブスの歴史地区』、エジプトの『聖都アブー・メナー』、リビアの『ガダーミスの旧市街』、レバノンの『トリポリのラシード・カラーミー国際見本市会場』、マリの世界遺産、ウクライナの世界遺産くらいで、その中から『アツィナナナの熱帯雨林』と『聖都アブー・メナー』、『ガダーミスの旧市街』の3件が危機遺産リストから脱しました。
危機遺産リストから脱する決議が出ると、議場全体で拍手が起こり、保有国がコメントをします。やはり危機遺産リストから脱するというのは嬉しいことですね。これで危機遺産の数は53件になりました。
危機遺産リストに入っていないものでは、ロシアの『カムチャツカ火山群』と『アルタイ・ゴールデン・マウンテン』について観光開発や資源開発によって危機にあるとウクライナが訴えたほか、『ビャウォヴィエジャ森林保護区』と『ウッド・バッファロー国立公園』、『大地溝帯にあるケニアの湖沼群』、『マロティ-ドラーケンスベルグ公園』、『ダウリアの景観群』についてコメントが出されました。また『フェニックス諸島保護地域』の決議に関する文言の修正などが行われました。
このままいくと危機遺産リスト入りする遺産よりも脱する遺産の方が多くなりそうです。遺産の保護の体制が整いつつあるという点では、よい傾向ですね。
明日も引き続き、保全状況報告が出されている遺産の審議が続きます。ここはかなりスピードが速くて、なかなか頭がついていかないですが、できるだけ報告をしていきたいと思います。
18時過ぎに会場を出ると、まだ昼過ぎ位の日差しで、歩いて帰るとすこし汗ばむほどでした。今は22時前ですが、まだまだ空は明るく、全開の窓から入ってくる風は秋のようです。
それではまた明日。
(2025/07.09、パリ)