■ 研究員ブログ222 ■ 鬼が笑わない程度に来年の話をしましょう

2025年もあと少しで終わりますね。年の瀬の慌ただしさは年々薄れ、年賀状も書かなくなると歳時の行事で追われることもなく、年末であることを忘れてしまうくらいです。今年は日本の世界遺産の新規登録はありませんでしたが、ユネスコではオードレ・アズレ事務局長からハーリド・エル・アナーニ事務局長へと代わり、日本からは「飛鳥・藤原の宮都」の推薦書が提出されるなど、2026年に向けた動きがあった年でした。

世界遺産検定では、2025年7月に60回検定を無事に終え、2026年には世界遺産検定20周年を迎えます。それに先駆けて、世界遺産アカデミー認定講師の協力の下で、世界遺産に関する総合情報サイト「pamon」を立ち上げることができたのも、今年の大きな出来事でした。「pamon」の立ち上げは、僕たちが目指している「世界遺産の学び」を、より身近に、より楽しく、そしてより深くするものです。

世界遺産検定の立ち上げから20年間で、世界遺産の学習の輪は確実に広がってきていると感じます。次の10年では、その学びを実際の保全活動や観光、イベント参加など、「リアルな体験」につなげていってもらいたいと考えています。その体験がさらに次の学びにつながっていくサイクルができるのが理想です。

世界遺産アカデミーでは、2026年最初のイベントとして、1月31日(土)に『ヴェネツィア憲章を考える~ドキュメンタリー上映&講演会~』を開催します。ここで上映される「ヴェネツィア1964:人類のための歴史的記念物」は、イタリア放送協会RAI CULTULAが制作したドキュメンタリーです。実際にヴェネツィア憲章の草案を作成したロベルト・パーネ氏の息子である、フェデリコ2世ナポリ国立大学教授アンドレア・パーネ氏が憲章の成立過程や歴史的な背景を辿るもので、世界遺産の学びの中で非常に重要でありながら背景があまり知られていないヴェネツィア憲章について深く知ることができます。

今回は、今年の6月にイタリア文化会館と日本イコモス国内委員会の主催で上映されたものを、世界遺産アカデミー客員研究員である飯島一隆さんが皆さんにも見てもらえるように交渉してくださり、特別に上映の機会をいただくことができました。

後半の講演会では、その飯島一隆さんと國學院大學教授の石本東生さん、文化庁参事官の中尾智行さんを交えて、「文化遺産の価値を共に考える」というテーマで対談も行います。

先日、4人で打ち合わせをしたのですが、予定を大きくオーバーして2時間近くも話してしまいました。その話がとても面白かったのです。石本さんの専門であるギリシャの都市再生の事例の話から、中尾さんの専門である考古遺跡の真正性の話、有形文化財の活用や文化観光、市民主体の文化財行政の在り方など、話が多岐にわたりながらしっかりつながっているという、あの2時間を皆さんに聞いてもらいたかったくらい楽しく充実した打ち合わせでした。

難しい話ではなく、文化遺産の守り方や文化遺産とのかかわり方など、わかりやすく身近に感じられる内容になると思いますので、ぜひご参加いただければと思います。

世界遺産検定認定者は、マイスターと1級が対象でしたが、問い合わせが多かったため、準1級の方も対象に加えさせていただきます。2級の方については残席の状況を見てご案内させていただきます。

それでは皆さま、今年も一年間ありがとうございました。
よいお年をお迎えください!

『ヴェネツィア憲章を考える~ドキュメンタリー上映&講演会~』
詳細とお申込みはこちらから⇒ https://wha.or.jp/?event=35650

【開催日】2026年1月31日(土)13:00~16:00(終了予定)
【会 場】東京理科大学 神楽坂キャンパス
【対 象】2025年度WHA会員、世界遺産クラブ会員
     世界遺産検定(マイスター、1級、準1級)認定者
     東京理科大学 経営学部生・経営学研究科生
【定 員】150名 ※先着順
【登壇者】
 ・國學院大學 教授、世界遺産検定監修委員 石本 東生氏
 ・文化庁 参事官(文化拠点担当)付 博物館支援調査官 中尾 智行氏
 ・WHA主任研究員 宮澤 光
 ・WHA客員研究員、日本イコモス文化観光国内委員、観光庁 飯島 一隆氏

(2025.12.26)