牧 結穂さん/大学院生

認定級 マイスター・世界遺産アカデミー認定講師

牧 結穂さん

筑波大学大学院 世界遺産学学位プログラム

世界遺産の学びは、自分の興味を広げてくれる入口になる

―― まずは世界遺産に興味を持ったきっかけ、世界遺産検定をご存知になったきっかけを教えてください。

 小学生の頃、アイドルが出演するとある番組のなかで、鈴木亮平さんが世界遺産を紹介する企画があり、それを母と一緒に見ていました。母が「面白そう」と興味を持って、「受けてみようか」と言い出したのがきっかけです。まず3級を受けて、2級まで取得しました。1級とマイスターは大学生になってからです。

―― ご家族も世界遺産検定の認定者でいらっしゃるのですね。

 はい、むしろ最初は母のほうが積極的でした。父もその後巻き込まれる形で1級まで取得しました。母もマイスターまで取得して認定講師になっています。私自身は、受験勉強もあって2級を取った後は少し間が空いてしまったのですが、そこからまた1級へと踏み出したのは親の影響もあったと思います。結果的には大学院で世界遺産の専攻に進み、そこでマイスター取得、認定講師となり、今の時点では私が一番深く世界遺産と関わるようなりました。

「自分だけ1級やマイスターを取っていないのは、家族のなかでちょっとしたプレッシャーもありました(笑)。」

―― 勉強は大変ではありませんでしたか。具体的な勉強方法について教えてください。

 2級までは中学校で世界史を深くやらないので、知らないことを覚えるのが大変でした。でも1級以降は受験で世界史を選択していたので、知識がつながって楽しくなりました。旅行も好きで、行った場所と知識が結びつくことも多かったです。

 具体的な勉強法でいくと、1級のときはテキストをひたすら読んで、過去問を解いて、覚えられない単語はスマホの単語帳アプリに入れて覚えました。建築家の名前や動植物の名前など、暗記が多かったですね。マイスターは問1と2は反復練習、問3は本格的な記述式なので、大学院の授業で扱った内容や先輩の論文を読んで、自分の考えをまとめるようにしました。

「世界遺産専攻に進んでいたので、マイスターについては大学院での生活の延長という感覚で受けられました。」

―― 大学院での研究や検定の勉強のなかで、特に印象に残っている世界遺産はありますか。

 国内では「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」が印象的です。世界遺産を勉強するなかでたくさんの宗教施設が出てきて、世界史と切り離すことができない宗教というものに関心を持つようになりました。「潜伏キリシタン関連遺産」は大学院での自身の研究テーマの候補にも挙げています。

 海外では「イスタンブルの歴史地区」と「アウシュヴィッツ・ビルケナウ」が特に印象に残っています。イスタンブルは街を歩くだけでとにかく楽しい場所でした。アウシュヴィッツは「負の遺産」と言われるところで世界の歴史に大きな影響を与えた場所なので、世界遺産を勉強している者としては見に行ってよかったと思います。

 世界遺産の知識を得たからこそ「せっかくだからここも行ってみよう」と訪れる場所が増えましたし、保全状況や登録範囲などにも注目するようになりました。例えば「どこまでが登録範囲で、どこからがバッファ・ゾーンなのか」など、テキストやネットで事前に調べてから行くようになりましたね。

イスタンブル(左)とアウシュヴィッツ(右)を訪れたときの写真。「アウシュヴィッツは戦争の歴史を学ぶうえで重要な場所だということを肌で感じました。」

―― 最近訪れた海外の世界遺産はありますか。また今後訪れたい世界遺産はどうでしょうか。

 最近では中国の北京に行きました。万里の長城はスケールがすごくて、日本ではなかなか見ないような壮大さを感じました。今後はアフリカにはまだ行ったことがないので、「ルワンダ虐殺の記憶の場」に行きたいと思っています。記憶の継承に関心があり、世界遺産に「記憶の場」というカテゴリーができたことも興味深いです。アルジェリアの「ムザブの谷」も行きたいですね。イスラムの集落が世界遺産になっていて、行くのは大変そうですが、ぜひ訪れたいです。

万里の長城にて。「大陸のスケール感に圧倒されましたね。」

―― ご卒業後の進路の予定について差し支えない範囲で教えてください。またこれから世界遺産検定を受けられる方へのメッセージをお願いします。

 卒業後は交通系や観光系など、世界遺産の知識を活かせる可能性のある一般企業に就職予定です。最初の仕事で世界遺産に関わるのは難しいかもしれませんが、将来的には世界遺産関連のプロジェクトに参加したり、認定講師として知識を伝える立場にも挑戦したいです。

 世界遺産検定は合格だけがモチベーションになるのではなく、建築・歴史・宗教など、さまざまな分野につながる知識が得られるのが面白いところです。自分の興味を広げるきっかけになるので、楽しみながら学ぶことが一番だと思います。

旅先で買ったマグネットのコレクション。「私自身、旅行が好きなので、もちろんプライベートでも世界遺産の知識は生活に彩りを与えてくれています。」

(2025年8月)