宮下 誠さん/塾講師

認定級 1級

宮下 誠さん

SEED進学会

「学びが人生を豊かにする」という経験を生徒に伝えたい

―― 今回、宮下さんは1級に合格されました。おめでとうございます。ここまでの道のりはどのようなものだったのか教えてください。

 元々歴史が好きだったこともあり、小さいころから何となく、ピラミッドやパルテノン神殿などの存在は知っていました。小学校高学年のとき、エジプト旅行に行った学校の先生から実際にピラミッドの写真を見せてもらったのですが、そのとき「本当にこんなものがあるんだ!」と小学生ながらに衝撃を受けたことを今でもよく覚えています。それ以来、世界遺産に少しずつ興味を持ち始め、いつか本物を見てみたいと思うようになりました。

 興味が高じて、数年前に2級を受検したのが世界遺産検定への最初のチャレンジです。2級に無事合格した後、続けて1級も取りたいという思いを持ち続けていたのですが、仕事を言い訳にしては長い間踏み込めずにいました。実は何年か前にも1級を申し込んだことがあるのですが、そのときも結局途中で諦めてしまって。

―― その壁を今回乗り越えて合格できたのはなぜでしょうか。

 塾講師としていつもは生徒を指導する側ではありますが、反対に自分が努力している姿を生徒に見てもらうことも、指導者として非常に大切なことだと思っています。私たち大人が子どもをよく観察する一方で、子どももまた大人のことをよく観察しています。尊敬できる大人なのかどうかを、その人の発言や行動で直感的にジャッジしています。だからこそ、教える側だからといって「勉強勉強」と生徒に単に言うだけでなく、行動が伴う人間でありたかったんです。

 というわけで、今回は1級へのチャレンジを途中で諦めることがないよう、生徒にも事前に伝えておくことで敢えて自分の逃げ道を無くし、絶対に合格するつもりで挑みました。ただ、いざ勉強をスタートしてみると、やっぱり1級は難しくて。時折、全力で取り組む姿勢が生徒に伝われば合格できなくてもしょうがないかな、と弱気になることもあったのですが、でも絶対に1級はほしいですし、「先生さすが!」と生徒からも言われたいですし。そんな天使と悪魔のささやきみたいなものが頭のなかをぐるぐる駆け巡りながら、仕事と勉強のバランスを取り続けた6ヵ月間でした。

 ちなみに、私たちの塾(SEED進学会)は先生たち皆が自分で決めた目標に向かって日々努力しています。私の場合はそれが世界遺産検定1級で、先生ごとに取り組んでいる目標はそれぞれ違いますが、何かに向かって一生懸命になる大人の姿が生徒の目に輝いて映っていたら、とてもうれしいですね。

『塾の生徒たちに「先生も目標に向かって走っているから一緒に頑張ろう!」というメッセージを、言葉ではなく行動で示そうと思っていました。』
※先生たちの挑戦はSEED進学会の公式YouTubeチャンネルで発信中

―― 世界遺産を勉強していて感じたことを教えてください。また、特に好きな世界遺産はありますか。

 勉強する前は、世界遺産を一つひとつ個別に知っていただけなのですが、勉強を進めていくうちに、それぞれの世界遺産が実は歴史的に関係していたり、世界遺産Aの影響を受けて世界遺産Bが建てられていたりと、密接につながっているものが多いことに驚きました。1つの世界遺産をジグソーパズルの1ピースだとすると、初めは色々な方向からピースをはめるだけで互いに組み合わさらないんですが、途中からピースとピースが次々とつながっていくようなイメージでしょうか。「点」で捉えていた知識が、次第に「線」で結ばれていく感覚がありました。「歴史はストーリーで理解するとよい」とよく言われますが、歴史が絡む世界遺産においても、ストーリーの奥深さをとても感じることができました。

 特に好きな世界遺産は、王道ではありますが、エジプトのピラミッド、ギリシャのパルテノン神殿、カンボジアのアンコール・ワットの3つです。ギリシャ神話やエジプト神話にも興味があったので、若いころはかじる程度ですがよく調べたりもしていました。そして、大人になってからこれらを実際に訪れたのですが、初めて本物を目にしたとき、全身に鳥肌が立つほどの、言葉ではとても言い表せない感動を覚えました。

パルテノン神殿での一枚。『建物の壮大さ、細部の繊細さ、古代技術の高さ、歴史的ストーリー。その何もかもが自分の想像をはるかに超えていて、こうして世界遺産に魅せられ続けて現在に至ります。』

―― 塾講師としてのお仕事に、世界遺産の学びが活きる部分はありそうですか。

 元々旅行が好きで、20代のころからお金が貯まったら海外旅行に行く!と決めてはその都度出かけていました。結果、お金は全然貯まりませんでしたが(笑)。そのとき、学んだ知識とともに旅行に行くと、何倍も奥深くて楽しい旅になるんです。つまり、「学びが人生を豊かにする」という経験を生徒に伝えるときに、自身が海外で体験したことと、世界遺産の学びが掛け合わさって大いに活きてくると思います。

 私は大学3年生のときからずっと塾講師をしていますが、仕事をするうえで、生徒の視野を広げてあげられるよう「自分の経験談を伝えること」を強く意識しています。中学生も高校生も、多くの生徒はまだまだ自分のやりたい仕事や将来の夢が定まっていません。本当にやりたいことに出会えるのは、もしかしたら大人になったあとかもしれません。しかし大人になってからでは、自分の進む道はおおよそ決まってしまっていることもままあります。だからこそ、10代のうちに「そういう捉え方もあるんだ」とか「そんな世界があるんだ」といった、色々な考えに触れておくことには、とても価値があると思っています。

 塾講師は子どもたちの人生選びにかかわる仕事です。だからこそ、勉強のことだけでなく、ときには一緒に悩んだり、ときには視野を広げてあげることも、塾講師である私の大切な役目だと考えています。私自身、これからもいろんな経験を重ねていきたいですし、新しいことにも進んでチャレンジしていくつもりです。

アンコール・ワットにて。『不確かなネット情報ではなく、誰かから聞いた話でもなく、生徒にとって身近な大人である塾の先生の血の通った経験談であれば、新鮮味も説得力もありますし、結果として生徒が楽しみながら視野を広げられるきっかけになると思うんです。』

―― 1級への挑戦を経た今、生徒さんや若い人たちへのメッセージがあれば教えてください。

 一番伝えたいのは、やはり「学びは必ず自分の人生を豊かにする」ということです。物事の仕組みやストーリーを知っていると、色々な角度からそれらを味わうことができますし、感じ方や楽しみ方が何倍にも膨れ上がります。私は『サンドウィッチマン&芦田愛菜の博士ちゃん』という番組がとても好きなのですが、出演する子どもたちがとても楽しそうで生き生きしているんですよね。その自信にあふれた表情を見るたびに、学びは人を豊かにするものなんだと再認識しています。

 私は、自分の考えをわかりやすく伝えられる人、話の引き出しが多い人ほど、人として魅力があると思っています。だからこそ、今後も学びや経験を止めることなく、より魅力的な塾講師を目指して歩み続けていきたいです。

(2024年2月)