認定級 2級
林 ジャン 和矢さん(左)、北村 美結さん(右)
桐蔭学園高等学校
―― 世界遺産検定をご存知になったきっかけを教えてください。
林さん:世界遺産検定を最初に知ったのは、小学生の頃でした。テレビで鈴木亮平さんが世界遺産検定1級を取得していると知り、「そんな検定があるんだ」と印象に残ったのを覚えています。ただ、当時は実際に受けるところまでは踏み出せませんでした。転機になったのは、高校に入って石橋先生(※)の世界遺産ゼミに所属したことです。石橋先生から「受けてみたら?」と声をかけていただき、挑戦したのがきっかけです。それまでは世界遺産に訪れることはほとんどありませんでした。私自身、フランスにルーツがあるのですが、帰国の目的はいつも親戚に会うことが中心で、世界遺産を巡る機会はあまりありませんでした。コロナ禍を経て、5年ぶりにフランスを訪れた昨年、ようやく念願だったモン・サン・ミシェルを訪れることができ、「せっかく行くなら」と自分からお願いして実現した旅でした。
北村さん:私も石橋先生の世界遺産ゼミに所属したことが、世界遺産検定に挑戦するきっかけでした。ゼミ内で石橋先生から「よかったら受けてみては」と勧めていただき、それなら挑戦してみようと思ったのが始まりです。もともと世界遺産には興味があり、ゼミも「世界遺産」という名前に惹かれて選びました。幼少期からヨーロッパを訪れる機会があり、一番印象的だったのが、7歳頃に訪れたスペインでの体験です。
※桐蔭学園高校地理科教諭、NPO法人世界遺産アカデミー客員研究員
北村さん:『アントニ・ガウディの作品群』をいくつか見学し、大きな感銘を受けて世界遺産に興味を持ちました。
―― 試験に向けてどのような勉強をしたのか教えてください。
林さん:僕自身、ノートに書き出すような勉強はせず、テキストを何度も繰り返し読む方法を取っていました。線を引いたり書き込んだりもほとんどせず、とにかく「読む」ことを重視した勉強法です。1、2周で覚えられるわけではありませんが、10周、20周と繰り返しさっと読み進めるなかで、毎回新しい学びがあり、苦ではなかったです。
一方で苦手だったのは、東南アジア、とくにタイなどの世界遺産です。例えば「プラ・プラーン様式」など、独特な言語や名称が多く、なかなか覚えづらい部分でした。最終的には、そうした難しい箇所は割り切り、ほかの分野の暗記に注力することで試験に臨みました。

林さん:叩き込むような勉強があまり得意ではない性格もあり、何周も読むことで自然と知識が頭に入ってくる感覚がありました。
北村さん:私もノートに書き込んだり、テキストに線を引いたりすることはせずに、勉強をしました。2級だとチャプターが40個くらいあるので、1週間で2~3チャプターをひたすら読んで、覚えて次の範囲に進みながら前の内容を復習するということを繰り返しました。部活で疲れている日など、あまりやる気がないときは、寝る前にパッと開いたページだけを見て覚えたりもしました。写真が載っていなかったりする世界遺産はどういうものかイメージがつきにくかったので、調べていました。
林さん:ほかにも世界遺産ゼミでは、世界遺産を楽しく学ぶために世界遺産クイズを作って対策に役立てていました。ゼミの前にロイロノートで1人1問クイズを作り、先生へ提出して、そのなかからゼミの授業中に出題をして、みたいなことをやっていました。
北村さん:勉強ではないのですが、私は旅行に行った際の記録をまとめています。例えば小学5〜6年生のとき、コロナ前ギリギリで行ったパリでは、2回目だったこともあり、お金や言葉のことなどを事前に調べてノートにまとめてから行きました。現地での日記には、左ハンドルに驚いたこととか、本当に些細なことを書いています。小さな頃から物を作るのが好きで、チケットなどもノートに貼って全部残していて。それと、旅が終わったあとに母が「パリの街の印象は?」という質問を書いてくれて、「道路にタバコのポイ捨てが多くて驚いた」といった感想を記入し、それが論文につながりました。

北村さん:最近はオーバーツーリズムについて何かできないかなと思っていて、絵を描くのが好きなので、絵本を描こうと思って、まだ途中なんですけど持ってきました。文章は一応完成しているのですが、父や母に見せたら「ちょっとわかりにくい」と言われたのでもう少し直そうと思っています。小さい子向けなので、ふりがなを振ったりしています。
―― 勉強していて特に好きになった遺産、気になった遺産はありましたか。
北村さん:やっぱりヨーロッパが好きで、建築様式がすごく面白いなと思いました。まだ行ったことはありませんが、特にケルン大聖堂が好きです。サグラダ・ファミリアもそうなんですけど、大聖堂系が好きみたいです。彫刻やステンドグラスがきれいで、壮大な感じがして。ケルン大聖堂ではクリスマスマーケットがあるそうなので、本当に行きたくて母にプレゼンしています。
林さん:僕はギザの三大ピラミッドです。小学校3年生のときに大英博物館に行って、本物のミイラを見たんです。最近も豊洲でピラミッド展があって、母と行ったんですけど、やっぱり一番好きな歴史はエジプトです。ギザの三大ピラミッドにできるだけ早く行きたいです。
林さん:髪の毛が残っていたり、本当に人が眠っているみたいで、そこからずっとエジプトに引き込まれてしまいました。
―― 林さんは2024年度の「SDGsチャレンジ」プレゼンテーション部門で優秀賞を獲得されました。どのような取り組みをされたのか教えてください。
林さん:クラスメイトたちとグループで、「ダークツーリズムから学ぶ修学旅行の学び」というテーマで研究を行いました。僕たちは世界遺産ゼミに所属しているので、観光ともつなげられるテーマがいいよね、という話になって、そこで「ダークツーリズム」がいいのではないか、という結論になりました。実際、修学旅行では広島を訪れて、平和記念碑や原爆ドームを見学する予定だったので、それとも関連付けて、この研究を行いました。
研究の内容としては、①アンケート調査、②インタビュー調査、③授業実践、この3つに取り組みました。まずアンケート調査では、桐蔭学園高校の生徒423名を対象に、「ダークツーリズムを知っていますか」といった、比較的シンプルな質問を中心に調査を行いました。次にインタビュー調査ですが、世界遺産に精通している方々へのインタビューに加えて、僕自身がフランスに住んでいる友人や、小中学校の9年間同じクラスだったイスラエル人の知人にもインタビューを行いました。その友人は、戦争というものをとても身近に感じて生きていて、来年には実際に兵役に就く予定でもあります。そうした背景の違う人たちへのインタビューを通して、イスラエル、日本、フランスの3カ国における教育の違いや、修学旅行の位置づけの違いについて比較・考察しました。
最後に授業実践では、日本のダークツーリズムとして最も有名なのは原爆ドームだと思いますが、「海外ではどこだろう」と考えたときに、アウシュヴィッツ・ビルケナウだと考えました。そこで、東京大学の渡邉英徳教授が開発された「ヒロシマ・アーカイブ」という、WebGISで語り部の証言と位置情報をつないだデジタル教材と、インターネット上で見つけたアウシュヴィッツ・ビルケナウのバーチャル教材、この2つを比較する授業実践を行いました。
林さん:修学旅行の事前学習として、修学旅行と関連付けた学びを深めたいと思ったのがテーマを選んだきっかけです。そのなかで、石橋先生からもいろいろとご提案をいただきました。
―― 北村さんは2024年度の「SDGsチャレンジ」小論文部門で優秀賞を獲得されました。どのような取り組みをされたのか教えてください。
北村さん:先ほども少しお話ししましたが、パリって「きれいな街」というイメージがすごく強かったんです。実際に建築物などは本当に素敵だったのですが、その一方で、道端にタバコの吸い殻が普通に落ちていたり、ダウンジャケットのポケットで吸い終わったタバコをそのままビリビリって消している人を見たりして、結構びっくりしました。そのときに、「ポイ捨てって、やっぱり環境に良くないよな」と強く感じて、それをテーマにして研究してみようと思いました。ちょうどパリに行く半年前くらいに、埼玉から川崎に引っ越してきたんですが、川崎市は環境問題やSDGsに力を入れている自治体で、3日間くらいかけてSDGsについて学ぶ企画に参加する機会がありました。そうした自分自身の体験と、それまでに学んできたことが重なって、「パリのゴミ事情を調べてみたい」と思い、小論文としてまとめました。
北村さん:環境問題やSDGsの重要性を学んでいたこともあって、パリで感じた違和感が、より強く印象に残ったんだと思います。
――世界遺産を学んでいて、特に印象的だったことは何でしょうか。
林さん:僕は、世界遺産って「今の人と昔の人をつなぐ架け橋」みたいな存在なんじゃないかな、というのがすごく印象に残っています。正直、それって勉強しなくても、なんとなく感じられたことかもしれないなとも思うんですけど、でも実際に世界遺産検定の勉強をしてから、見え方が180度変わったなと感じました。例えば、実際に現地に行ったときに、知識があるのとないのとでは、感じ方が大きく異なると思うんです。「ここでは昔こういう出来事があった」ということを知っていると、その場所がただの風景じゃなくなるというか。
例で言うと、桜田門ですね。桜田門外の変で井伊直弼が暗殺された、という知識があると、「何百年も前に、まさにこの場所でそんなことが起きていたんだ」というのを、その場で直に感じられる。そういうふうに、過去の出来事を今に引き寄せて感じられる場として、世界遺産には存在意義があるんじゃないかなと思いました。だから、改めて世界遺産は「今の人」と「昔の人」をつなぐ架け橋なんだな、という点がとても印象的でした。
北村さん:私は文系ですが、建築を学ぶのがすごく面白かったです。建築様式については、正直、今まであまり深く考えたことがありませんでした。一見すると全部同じように見える、って言ったらすごく失礼なんですけど、「ヨーロッパの建築」などとひとまとめにしてしまっていて、日本でも「神社」とか、そういう大きなカテゴリーでしか捉えていなかったなと思って。でも、実際に学んでみると、ゴシック、ロマネスクなど、本当にいろいろな様式があって、「こんなに違いがあるんだ」とびっくりしました。
それと、子どもの頃は文化遺産ばかりに興味があったので、自然遺産をしっかり学んだのも新鮮でした。自然遺産を知って、「世界ってこんなに壮大で、広いんだな」と改めて感じました。日本の自然遺産にはまだ行ったことがないので、ずっと行きたいと思っています。小笠原諸島にすごく興味がありますが、遠いじゃないですか。だからこそ、行ってみたい気持ちが強いですね。船で行って戻ってくるのに1週間くらいかかる、なかなか簡単には行けない場所だからこそ、余計に惹かれます。
北村さん:小さな頃は半年に1回くらい日光東照宮に行っていました。建築の細かさもそうですし、自然の雄大さも印象に残っていて、本当に大好きなところです。
―― 将来の進路希望について、差し支えない範囲で教えてください。
北村さん:とにかく海外が大好きなので、海外と関わることができる大学に進みたいと考えています。外国語学部や異文化系、国際系の学部に興味があって、今後はそういった分野を学びたいです。それと、今の国際会議などを見ていても、英語だけではなくフランス語が飛び交う場面も多いので、英語に加えてフランス語も学びたいなと思っています。また、旅をしたくて仕方ないので世界遺産を学びながら、どんどん旅に行きたいなと思っています。
林さん:私は国際系の学部に進みたいと考えています。ただ、英語を「学ぶ」というよりは、「英語で学ぶ」ことをやりたいと思っています。英語は、あくまで手段だと思っていて、英語そのものを目的にしてしまうのは違うなと感じているんです。英語を使って、例えば世界遺産を学ぶとか、国際問題について考えるとか、そういう学び方ができれば、将来何か問題を解決しようとしたときに、英語を自然に「使うもの」として捉えられると思っています。英語を目的にしていないからこそ、世界各国の人たちと、国際問題や社会課題について対等に議論できるんじゃないかな、と。
将来的には、金融分野にも興味があります。お金の動きって、実はさまざまな社会問題や国際問題と深くつながっていると思っていて。それから、僕の名前の「和矢」の「和」は、「平和をつくる人になってほしい」という思いを込めて、親がつけてくれた名前なんです。なので、名前負けしたくないな、という気持ちもあります。そういう思いもあって、紛争や戦争、そして危機にある世界遺産の問題などに関わるなかで、逆に「平和をつくるためのお金の使い方」や「お金の流れ」を考えられる人になりたいという思いがあります。
林さん:鈴木亮平さんのように、俳優が本業でも、その仕事の一部として世界遺産の番組に関わっている姿もすごく印象的です。自分も、仕事の一部として世界遺産に関わったり、あるいは趣味として世界遺産を楽しんだり、そういう形でずっと関わり続けたいなと思っています。世界遺産って、本当にロマンがありますし、一生の趣味にしたいです。
―― 世界遺産の知識を今後どのように活かしていきたいと考えていますか。
林さん:世界遺産の勉強を通して身についたのは、世界遺産そのものの知識だけじゃなかったな、と思っています。それ以上に、「物事の見方」が変わったと感じています。というのも、何か問題が起きたとき、メディアや世の中では、一方の立場だけを見て批判することが多いように感じています。例えば、最近の国際情勢で言うと、イランが攻撃されたニュースなどでも、アメリカ側の立場だけを見て意見を言っている人が多いように感じました。でも、どんな問題にも、それぞれの事情や理由があって起きているものだと思っていて。だからこそ、一つの出来事に対して、必ず「双方の視点」を見た上で理解し、自分の意見を持つことが大切なんじゃないかなと思うようになりました。世界遺産を学ぶなかでも、その国の宗教や文化、歴史、これまでどんな教育を受けてきたのかによって、考え方が大きく違うということを知りました。「世界遺産×SDGsチャレンジ!」で学んできたことを通して、そうした背景をちゃんと理解しようとする姿勢の大切さを強く感じました。

林さん:これからいろいろな社会課題や国際問題を見るときも、ただ闇雲に「これは違う」と批判するのではなくて、その背景にある宗教、文化、歴史、価値観などを念頭に置いた上で、物事を考えていきたいと思っています。
北村さん:やっぱり旅が好きなので、まずは自分自身が旅を楽しむために世界遺産の知識を使っていきたいなと思っています。家族と一緒に旅行に行ったときも、最近は京都に行ったのですが、学んだことを実際に遺産の前で家族に説明したら、「楽しかった」って言ってもらえたんです。そうやって、一緒に行っている人も楽しんでもらえるのは、知識があるからこそできることだなと思いました。自分が楽しむだけじゃなくて、周りの人にも世界遺産の魅力を伝えられるのは、すごくいいなと思っています。それから、絵本を作ったりして、いろいろな人に世界遺産の良さを伝えていきたいという気持ちもあります。実際、京都で外国の方にインタビューをしたときに、「どちらの出身ですか?」と聞いた流れで、「そこってこの世界遺産がありますよね」みたいな話になって、すごく盛り上がったことがあって。世界遺産の知識って、ただ詳しくなるだけじゃなくて、国を越えたコミュニケーションのきっかけにもなるんだなと思いました。

北村さん:世界遺産の良さを伝えることはもちろん、いろいろな国の人とつながるための一つのツールとしても、この知識を活かしていきたいです。
(2026年5月)