2020年2月『バガン』

2020年2月『ミャンマー連邦共和国:バガン』

世界三大仏教遺跡バガン


 ミャンマーを流れる大河エーヤワディー川のほとりに広がる平野、そこには大小さまざまな何千もの仏教建築物が立ち並び、独特な景観をつくり出しています。さらに随所に建てられた金色に輝く壮麗な仏塔(パゴダ)――。カンボジアの「アンコール・ワット」、インドネシアの「ボロブドゥール」と並んで世界三大仏教遺跡の1つに数えられるのが、今月取り上げるミャンマーの世界遺産『バガン』です。
金色に輝くシュエズィーゴン・パゴダ
 一体いつ、だれが、何のためにこのように膨大な数の仏教建造物を築いたのでしょうか? おそらくバガンの遺跡を見た時に誰もが抱く疑問でしょう。 バガンの仏教建造物の多くが築かれたのは11世紀から13世紀とされています。この時代、ミャンマーでは初めての統一王朝バガン朝が繁栄期を迎えていました。バガン朝の王様は仏教を熱心に信奉し、国民への布教に励みました。ここで注意したいのがバガンでは日本で広まった「大乗仏教」ではなく「上座部仏教」が布教されたことです。これがバガンの遺跡の謎を解くカギにつながります。 上座部仏教の大きな特徴の1つが「喜捨(きしゃ)」という行いです。少しむずかしい仏教の言葉ですが、「功徳(くどく)を積むために金銭や物品を、お寺や困窮者に差しだすこと」を指します。ミャンマーやタイ、ラオスといった上座部仏教の信仰されている国で、あずき色や橙色の僧衣をまとまった僧侶たちが列をなして歩き、民家の軒先などで施しものを受けているところを見たことがある人がいると思います。あれは人々が喜捨をしているのです。上座部仏教では、現世で喜捨をして功徳を積むことによって、来世ではより良く生まれ変わることができると信じられています。
喜捨を受けてミャンマーの街を歩く僧侶
 バガンに残る多くの仏塔(パゴダ)も、功徳を積むために築かれたものでした。11世紀のバガン朝が建国された当初は、王族がまず建てはじめました。それから仏教が広まるにつれて、大臣や役人たちがそれに倣い、さらには一般人までもが功徳を積むために競うように仏塔を建設しました。こうしてバガンの今なお3,000以上残る仏教建造物はできあがったのです。
平原に立ち並ぶ多くの仏教建造物

世界遺産登録の背景に日本チーム!


 さて、『バガン』が世界遺産に登録されたのは、去年(2019年)の世界遺産委員会のことでした。この世界遺産登録に日本が一役買っていたことはご存知でしょうか。暫定リストにバガンが登録されると、ミャンマー政府は遺跡の保存・修復体制を確立しようと、日本から専門家を招いてきました。その1つが東京文化財研究所のチームです。 東京文化財研究所は2013年からバガンの仏教遺跡の保存・修復に関わっています。東文研が現地で行うのは壁画の修復事業と、壁画を守るためのレンガ造りの寺院の修復事業です。バガンというと膨大な数の仏教建造物に注目が集まりがちですが、建物の中には高い技術レベルを誇る緻密で美しい壁画が数多く描かれています。
住友財団の支援のもと進められるロカティーパン寺院の仏教壁画の修復
 壁画修復事業を現地で指導するのが、東京文化財研究所の前川佳文(まえかわ・よしふみ)さんです。前川さんはこの事業を様々な国籍をもった専門家からなるチームで進めています。「壁画がほとんどない日本は欧米諸国の修復技術にはかないません。また、バガンのように700~1,000年前に建てられたレンガ造りの建物がない日本は、それらを修復する経験が不足しているといえます。ですから、不得意な部分は国籍に関係なく専門家に協力を仰ぎ、ベストなチームで文化財を救うことが大事です」(前川さん)。
壁画修復作業にあたる東京文化財研究所の前川さん
様々な国籍のスタッフで構成された修復チーム
 こうした多国籍チームの中でも“日本流”の丁寧な仕事ぶりは健在のようです。2016年にミャンマーで巨大地震が起き、バガンの遺跡も甚大な被害を受けましたが、その際にユネスコの定めるガイドラインに従ってしっかり事業プランを立てて修復を行ったのは東京文化財研究所のチームしかなかったそうです。これが世界遺産登録にあたってのICOMOSの事前調査の際にも高く評価されました。「日本ならではの繊細な事業プランの組み立て方は国際的に高く評価されています。 きちっとした事業プランがあれば、どんな国の人が入ってきても大きな混乱を招くことなく作業を進めることができます」(前川さん)。
“日本流”の繊細な修復事業プランが高く評価されている
 世界遺産にはレンガや泥、 木、 石、 コンクリートなど、さまざまな素材でつくられたものがあり、そのつくり方も多種多様です。 だからこそ、“国籍の壁”を超えた様々な分野の専門家による技術協力が必要です。しかし保存修復の現場でまだ“国籍の壁”は大きく、“国籍の壁”を超えた人員編成のチームは少ないのが現状です。その意味で、東京文化財研究所がバガンで行う、様々な国の専門家によるチームの保存修復作業は、1つの先駆的な事例として注目されます。
現地の若手専門家の育成も“日本流”で丁寧に行う

(世界遺産検定事務局 大澤暁)

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バガン(ミャンマー連邦共和国) 登録基準:(iii) (iv) (vi) 登録年:2019年登録 登録区分:文化遺産

今月の遺産検定「ミャンマー連邦共和国:バガン」 今月の遺産検定「ミャンマー連邦共和国:バガン」

例題

Q1.『バガン』はどこの国の世界遺産でしょうか?
    1. (3級レベル)
  1. トルコ共和国
  2. マリ共和国
  3. ミャンマー連邦共和国
  4. ブラジル連邦共和国
Q2.『バガン』は何の宗教に関わる遺跡でしょうか?
    1. (2級レベル)
  1. イスラム教
  2. ゾロアスター教
  3. ヒンドゥー教
  4. 仏教
Q3. 2019年に登録された『バガン』は、ミャンマーでいくつ目の世界遺産でしょうか?
    1. (1級レベル)
  1. 1つ目
  2. 2つ目
  3. 3つ目
  4. 4つ目
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回の更新予定:2020年3月18日(水)頃を予定してます。