解説
「カパック・ニャン」はアンデス地方で使用されていたケチュア語で「王の道」「偉大な道」という意味です。インカ帝国の領地にあった南米6ヵ国を縦断する広大な道路網を指し、帝国の首都であったクスコの広場を起点とした、4つの主要な経路がありました。
『カパック・ニャン:アンデスの道』は、アルゼンチン共和国、エクアドル共和国、コロンビア共和国、チリ共和国、ペルー共和国、ボリビア多民族国にまたがるトランスバウンダリー・サイトです。総延長は3万㎞に達し、標高6,000m級のアンデス山脈の雪深い山頂から、熱帯雨林に覆われた海岸、渓谷や砂漠までさまざまな地形を貫いています。
この道は人々や文化をつなぐ交通網として機能し、帝国の大動脈となっていました。また、インカ帝国には馬がいなかったため、帝国の重要な伝令や指令は「チャスキ」と呼ばれる飛脚のような人々が担い、この「王の道」を使って情報を運びました。