せかけんクイズ No.531

解説

中国ではツバメの巣は栄養価が高く、美容や健康に良い珍味として珍重されてきました。東南アジアから中国への食用のツバメの巣の輸出は、少なくとも明代（14〜17世紀）には始まっていたとされており、ボルネオ島のニア洞窟もその供給源のひとつであったと考えられています。

『ニア国立公園の洞窟群の考古学的遺産』は、マレーシアのボルネオ島西海岸に位置する、巨大な連結洞窟群です。広い洞窟の中からは岩絵や船型の棺のほか、火を使用した跡や植物加工の痕跡などが発見されており、熱帯雨林という過酷な環境に人類が適応して暮らした最古の証拠であると考えられています。

また、狩猟採集から農耕へと移行する過程も追うことができ、世界中の人間の移住や環境適応の歴史の研究に新たな知識と発見をもたらしました。地元の人々は、洞窟から糞化石や食用のツバメの巣を採取する際に、「モロン」と呼ばれる「必要なものだけを取る」という伝統的慣習を今も守り続けています。