2019年10月『ウルル、カタ・ジュタ国立公園』

2019年10月 今月の世界遺産『ウルル、カタ・ジュタ国立公園』

ウルル(エアーズ・ロック)登山禁止の理由


 今回取り上げるのは、世界で2番目に大きな一枚岩「ウルル(エアーズ・ロック)」で有名な『ウルル、カタ・ジュタ国立公園』です。映画化されたベストセラー小説「世界の中心で、愛をさけぶ」でも取り上げられたこの世界遺産が、今大きな注目を集めています。オーストラリア政府が10月26日以降のウルルでの登山を禁止したためです。

ウルルの登山口(2019年8月撮影)
 登山禁止前にこの世界的に有名な一枚岩に登ろうという駆け込みの登山客がウルルに押し寄せています。4月から8月に『ウルル、カタ・ジュタ国立公園』を訪れた観光客数は、前年を3割上回りました。8月にウルルへ登った東京都在住の女性は「登山道はとても混んでいた。登山客のなかでとくに多かったのはオーストラリア人と日本人だった」といいます。日本人が多いのは「セカチュー」の影響でしょうか。

多くの人で混み合うウルルの登山道(2019年8月撮影)


ウルル頂上からカタ・ジュタを眺む
 では、なぜオーストラリア政府はウルル登山を禁止することに決めたのでしょう? その理由は登山口に立つ看板(写真下)から知ることができます。“Please, don’t climb”と記された下には「ウルルは我々(アンガス族)の文化では神聖なものとされています。叡智の宿る場所とされています。我々の伝統的な法では登ることは許されていません」とあります。
 ウルルはこの地に伝統的に暮らすアボリジニのアナング族の人々にとって聖地とされてきました。アナング族の人々は以前から長いこと登山禁止を訴えてきており、今回その主張がようやく通ったのです。

登山口に立つアナング族の訴えを記した看板
 ウルル登山が禁止される10月26日はアナング族の人々にとって特別な日です。今から34年前の1985年10月26日にウルル、カタ・ジュタ一帯はオーストラリア政府からアナング族へ「返還」されたのです。「返還」に至るまでには、先住民アナング族の人々の多くの苦労がありました。1976年から9年にも及ぶ裁判の結果、ようやくのこと「返還」は認められました。
 しかし、その後もウルル、カタ・ジュタはアナング族の自由にはなりませんでした。アナング族からオーストラリア政府が“借り受ける”という形で、管理運営はアナング族とオーストラリア政府が協議しながら行ってきました。今回、登山禁止が10月26日という特別な日から開始される背景には、聖地が本当の意味で「返還」されるというアナング族の人々の思いがあるのかもしれません。

ウルル、カタ・ジュタに暮らすアナング族の人

これからの観光は“自然”と“文化”の両軸


 さて、登山が禁止された後で気になるのは『ウルル、カタ・ジュタ国立公園』の観光を今後どう楽しむかです。「過去数年にわたって、ウルル訪問者の体験を向上させるために、さまざまな新しい体験(アクティビティー)が開発されてきました」とオーストラリア国立公園管理局のスポークスパーソンはいい、登山以外にも観光客が楽しむことができるアクティビティが多くあると主張します。今後の観光の目玉として特に期待するのがアナング族の“文化”体験です。「カルチャーセンターでは毎日、文化に関するワークショップやデモンストレーションが行われ、無料ガイド付きマラウォークも毎朝開催されております。訪れた人は、古代のロックアートや国立公園の素晴らしい植物や動物を見て、アナング族にとってそれらのものがもつ重要性について学ぶことができます。またギャラリーでは地元で作られた先住民の芸術や工芸品を見つけることができます。」

アナング族の文化を学ぶアクティビティ ©Tourism NT/Archie Sartracom
 『ウルル、カタ・ジュタ国立公園』は自然と文化の双方に“顕著な普遍的価値”が認められた、数少ない「複合遺産」です。1987年に世界遺産登録された当初は自然遺産でしたが、アボリジニの伝統的な生活が営まれてきた文化面の評価も加えられて、1994年に複合遺産として拡大登録されました。ですので、『ウルル、カタ・ジュタ国立公園』というとウルル登山などの“自然”体験に目が行きがちですが、“文化”体験の普及にも力を入れる公園管理局の姿勢は理解できます。
 ウルル登山の禁止を一つのきっかけとして、ウルル、カタ・ジュタで自然と文化がともに楽しめるような観光がどんどん普及してゆけばよいですね。

(世界遺産検定事務局 大澤暁)

『ウルル、カタ・ジュタ国立公園』に関する
検定の問題はコチラ

ウルル、カタ・ジュタ国立公園(オーストラリア連邦)
登録基準:(v) (vi) (vii) (viii)
登録年:1987年登録/1994年範囲拡大
登録区分:複合遺産



今月の遺産検定「ウルル、カタ・ジュタ国立公園」 今月の遺産検定「ウルル、カタ・ジュタ国立公園」


例題

Q1. 『ウルル、カタ・ジュタ国立公園』で伝統的な生活を営む先住民を何というでしょうか。
    (4級レベル)
  1. マサイ族
  2. シェルパ族
  3. アボリジニ
  4. マオリ
Q2. オーストラリア中央部の「ウルル」と呼ばれる巨大な一枚岩の別称は何でしょうか。
    (3級レベル)
  1. エアーズ・ロック
  2. ジャイアント・ロック
  3. ワンダフル・ロック
  4. セイクリッド・ロック
Q3. 『ウルル、カタ・ジュタ国立公園』の「カタ・ジュタ」とはどのような意味でしょうか。
    (1級レベル)
  1. たくさんの足
  2. たくさんの手
  3. たくさんの目
  4. たくさんの頭

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