解説
中世のイーペルでは、鐘楼から生きた猫を投げ落とす行事が年に一度行われていました。これは、猫が病や魔術の象徴として不吉なものとされていたことや、ネズミ除けの猫が増えすぎたことも理由といわれています。現在では猫に仮装した人や山車が街を練り歩く「猫祭り」と形を変え、クライマックスで猫のぬいぐるみが鐘楼から投げられています。
フランス北部やベルギーのフランドル地方、ワロン地方の都市には、11~17世紀の鐘楼が数多く残されており、現在56の鐘楼が世界遺産に登録されています。交通の要衝だったこれらの都市は、経済力を背景に自治権を獲得し、市民は自由と繁栄の象徴として街に鐘楼を建てました。建築様式は古代ローマ風からアール・デコまで多様で、戦争などで被害を受けながらも、そのたびに修復・再建されています。
イーペルの繊維会館は13~14世紀に建てられたゴシック様式の建物です。第一次世界大戦で街とともに破壊された後、戦前の状態に再建されました。