奈尾 真一さん/商社勤務

奈尾 真一さん

認定級 マイスター

奈尾 真一さん

商社勤務

未知なる世界をもっと深く感じたい その"手段"として世界遺産を学ぶ

―― 検定に挑戦されたきっかけ、勉強方法は?

もともと旅行好きなのですが、仕事の関係でロンドンに駐在した折に、この機会に長らく世界の中心だったヨーロッパの文化を触れておこうと、より積極的に旅に出るようになりました。でもヨーロッパの石造りの建造物はどれも同じように見えてしまう。だからそれぞれの文化的・歴史的背景を知れば、違いがわかってもっと楽しめるのではないかと思うようになりました。そんな折に検定と出会ったんです。私にとって世界遺産を学ぶことは「旅の楽しみを深いものにする」という「目的」のための「手段」。最初は2級程度の知識があれば目的は達成できるかなと思っていましたが、勉強しているうちに行ってみたいところが増え、実際に行くならどうやって周ろうかと、旅の妄想(笑)がどんどん広がり楽しくなって、結局マイスターまで取得してしまいました。

勉強方法は、2級まではテキストをペンでチェックして覚える方法を取りました。ただ1級は世界遺産ごとに覚えるだけでなく、遺産同士の「横のつながり」を意識しないと難しいだろうと思い、まずはすべての国・名称を丸暗記しました。暗記が目的というより、その方法がキモなんです。まずは当該地域の世界遺産を自分なりにグルーピングします。その際に「横のつながり」を理解する、というわけです。たとえば、アメリカの世界遺産であれば「先住民族系」や「近現代系」という具合です。そして語呂合わせを作って覚えました。コツは覚える際にそれぞれの遺産を頭の中で映像化すること。そうすると映像と語呂が結びついて、忘れないんです。

最近訪れ、登頂したキリマンジャロにて。「何ヶ月も前から登頂のために体作りをしました。やはりそこに立ってみてこそ感じるものがあると思います」

―― 世界遺産を学んでよかったことと、検定の挑戦者にメッセージをお願いします

訪れた世界遺産は140箇所以上です。知識があることで旅の楽しさがより深まったのは言うまでもありません。また海外の方とのコミュニケーションにも役立ちました。ロンドンで出会ったイタリア人に「世界遺産に興味があるんだけどイタリアの遺産ではどこがお勧め?」と質問したところ、とても会話が弾んだという経験もあります。自分の国のことを知っていたことを喜んでくれ、また仕事以外の話で盛り上がったこともあって、かなり距離が近くなった気がします。

私は、実際に世界遺産を訪ねてそこの空気を感じてこそ、学んだことの真の意味が活かされると思っています。これから世界遺産検定に挑戦しようとする方、特に若い世代の方には「検定合格」は「目的=ゴール」ではなく、「手段」にしてほしいと思っています。世界は多様で驚きに満ちていることを実感し、旅でも仕事でもなんでもいいから、世界に向かってアプローチしようとするためのきっかけとして、捉えていたただきたいと思っています。

テキストを読み込み、チェックペンとシートを利用して勉強。「それぞれの方になじみやすいやり方で勉強すればいいのではないでしょうか」

負の遺産「アウシュヴィッツ・ビルケナウ」にて。「ガス室の前でイスラエルの国旗をまとって泣いていたユダヤ人カップル。今思い出しても涙が出そうになります」

アルゼンチン「ロス・グラシアレス国立公園」のペリト・モレノ氷河。「氷河が崩れる瞬間を撮影できました。地響きのような崩落音に身震い!

(2012年3月)