■ 研究員ブログ225 ■ 「飛鳥・藤原の宮都」の勧告まであと少し!

何だか季節外れの高い気温のせいで、まだ5月というのが信じられなくなったりしますが、まだ5月なんですよね。子供の頃、この季節は新緑の爽やかな季節だった気がするのですが。でも、来月にはサッカーのワールドカップが始まり、その翌月には第48回世界遺産委員会も開催されるので、気温と共に僕はこれからさらに熱くなりそうです。

先日、その第48回世界遺産委員会の日程などが公表されました。今年の世界遺産委員会は、韓国の釜山で7月19日(日)から29日(水)まで、11日間の日程で開催されます。この日程は例年より少し遅めの開催になります。議長国は韓国で、議長は韓国から選ばれたイ・ビョンヒョン氏が務める予定です。イ・ビョンヒョン氏は韓国の元外交官で、2015年から2019年まで駐ユネスコ韓国政府代表部大使も務められました。韓国が世界遺産委員会の議長国を務めるのは今回が初めてです。

世界遺産委員会の委員国は、2025年11月の改選で委員国の約半数に当たる12カ国が入れ替わりました。昨年まで委員国を務めていた日本もここで外れています。またユネスコの事務局長も同じタイミングでフランスのオードレ・アズレ氏からエジプトのハーリド・エル・アナーニ氏に替わったので、第48回世界遺産委員会は顔ぶれが一新してまた前回とは違う雰囲気の会合になりそうですね。

今回の世界遺産委員会での注目点は、やはり日本から2年ぶりに新しい世界遺産が誕生するかもしれないという点です。昨年、推薦書を提出した「飛鳥・藤原の宮都」は、2025年9月にICOMOSによる現地調査が終わり、現在は勧告が出るのを待っているところです。世界遺産委員会の諮問機関であるICOMOSの勧告は、世界遺産委員会が始まる6週間前までに出されます。

世界遺産委員会の初日である7月19日の6週間前というと、6月7日です。大きな問題がないと早めに出ることもあるため、来週中にも勧告が出される可能性があります。ここで4段階の勧告のうち、世界遺産としての顕著な普遍的価値(OUV)を認めて世界遺産リストに載せるのがふさわしいとする「登録」勧告が出たら、7月24日から始まる新規登録に関する審議の中で取り上げられて、「登録」が決議される可能性が高くなります。

しかし、そこで「情報照会」や「登録延期」勧告になった場合は、対応が難しくなります。ICOMOSの勧告内容に事実関係の誤りなどがあった場合は、その内容を指摘し訂正する文書を世界遺産委員会の14日前までに出すことができますが、ICOMOSの評価書を受け取ってから訂正文書を提出するまで4週間ほどしかないため、推薦書を作成する前にどれだけ事前の準備を積み重ねきたのかが、その後の世界遺産委員会での結果を左右します。

2007年にICOMOSから「登録延期」勧告が出された『石見銀山遺跡とその文化的景観』では、すぐに訂正文書と大量の追加資料を用意し、それを手に近藤誠一大使が関係国などに説明を行って、本会議では見事「登録」決議となりました。追加資料などの作成を行った担当者の方から話を聞いて思い出したのが、海上に見える氷山はその全体の10%ほどに過ぎないという、あの有名なアルキメデスの原理のイラストです。海中に大きな氷があったからこそすぐに対応できたのだと感心しました。

「飛鳥・藤原の宮都」は、プレリミナリー・アセスメント(事前評価)の制度を受けずに推薦を行う、これまでの推薦方法で推薦された日本では最後の遺産になります。ここで万が一「不登録」勧告が出されて推薦書の取り下げなんてことになると、2027年に審議される遺産からは推薦の制度が変更されたため、次はプレリミナリー・アセスメントを受けるところから始めないといけないので大ごとです。

果たして、「飛鳥・藤原の宮都」にはどのような勧告が出されるでしょうか。あと2週間弱、楽しみに祈りながら待ちたいですね。

<第48回世界遺産委員会の委員国>
アゼルバイジャン、アルメニア、ウクライナ、カザフスタン、韓国、クウェート、グレナダ、ケニア、ジャマイカ、スイス、セネガル、タンザニア、チェコ、トーゴ、トルコ、バングラデシュ、ベトナム、ペルー、ポーランド、レバノン

(2026.05.25)

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