茨城県県北生涯学習センター
事業グループ長
志摩 邦雄氏
生涯学習の一環として「世界遺産講座」を開設。関連施設への「現地研修」も含め、評判は上々!
―― 茨城県では、他県に例のない5つの生涯学習センターを設けています。そのひとつである、茨城県県北生涯学習センターでは、2007年から世界遺産講座を開講。2009年8月からは世界遺産検定講座の開催が予定されており、同年11月度の検定試験は同センターが会場となる団体受検も決まっています。まずは施設の概要と、今まで行われてきた世界遺産講座の内容を教えてください。
茨城県県北生涯学習センターは、県北地域の常陸太田市・日立市・高萩市・北茨城市における生涯学習の拠点として、様々なニーズに合わせた生涯学習情報の収集、提供、発信を行っています。1年を前期・後期に分けて、「環境・健康コース」「産業・技術・科学コース」「社会・教育・福祉コース」などのカテゴリー別に、さまざまな講座を開設しており、世界遺産講座「世界遺産を学ぶ」は語学学習などが含まれる「国際関係学コース」に属しています。2007年の前期から「日本編」「ヨーロッパ編」「南北アメリカ編」と続き、現在行われている、「アフリカ編」で4回目になります。世界遺産アカデミー主任研究員の目黒正武さんを講師に迎え、世界遺産の理念から、各地域の遺産の背景や歴史などをご講義頂いております。
また、講座の中では「現地研修」と称し、講座内容がよりリアルに体験できる施設や展覧会などに出向くカリキュラムも組み込んでいます。例えば「日本編」では日光東照宮を訪れましたが、普段あまり経験できない、世界遺産登録活動に携わった方から直接お話を聞く機会があり、大変好評でした。今回の「アフリカ編」では、「海のエジプト展」を観覧する予定です。
―― これまで行われてきた世界遺産講座の反響は?
人気はとても高く、常に定員を上回る応募があります。この講座に限らず、参加者は生活にゆとりのできた世代が多いのですが、他の講座に比較すると男性が多いですね。日立製作所というグローバル企業と関連の深い土地柄ということもあり、海外での生活経験がある方が少なくないといった地域特性も、講座の潜在的人気に関連しているのかもしれません。
講座参加者からは「紹介された海外の世界遺産を訪ねてみたくなった」というような声や「今まで何気なく訪れていた観光地や歴史的建造物を見る目が変わった」といった声などを多数頂戴しています。
世界遺産を知ることで、固有の歴史がある"地域"を愛する気持ちを
―― そもそも、生涯学習のテーマとして「世界遺産」に注目されたのはなぜですか?
メディアなどの紹介で幅広い層に世界遺産の関心が高まっているということはもちろんですが、世界遺産を学ぶことが、「地域活性の一翼を担う」という当センターの理念にも合致すると考えたからです。単に「世界遺産」を知るだけではなく、設立の精神や遺産がもつ背景・歴史を知ることで、私たちが住む地域それぞれに固有の歴史があり、それを次世代に伝えていくことの大切さを実感していただけるのではないかという期待もあります。
もちろんこの講座に限らず、受講者の方の目的はさまざまでいいと思います。まずは、「学ぶ楽しさ」に触れていただくのが大切。その意味で、世界遺産の学びは、ワクワク感も十分にありますから、楽しく学んでいただく中で地域を愛する気持ちのようなものが多くの方の中に根付いていけばいいなと考えています。
検定への挑戦を通じ、受身ではなく自ら学んだことを地域に発信したいと考える人材の登場に期待
―― 2009年8月より、同年11月度の検定試験に向けて「世界遺産検定2009に挑戦!」という講座を開設されましたが、その内容と開設の理由を教えてください。
世界遺産講座「世界遺産を学ぶ」はリピートされる方も多く、その中には学んだことを何らかの形にしてみたいという方もいらっしゃるのではないかと考えました。そこで、「ステップアップコース」というカテゴリーの中で、世界遺産検定に興味がある方、挑戦したいという方向けの講座として「世界遺産検定2009に挑戦!」を開設しました。「世界遺産の基礎知識」から始まり、それぞれの回にテーマを設け、11月まで計7回の講座を予定しています。世界遺産検定3級、2級に挑戦するための講座ですが、けっして「特訓講座」というわけではなく、受検を考えていない人にも役立つような内容を予定しています。現在、受講者を募集中ですが、「世界遺産を学ぶ」に参加しておられた方が申込まれているのを見ると、「おっ!頑張って挑戦されるんだ!」と嬉しくなりますね。
―― 世界遺産及び世界遺産検定に関する「学び」を、どう生涯教育に活かしていこうと考えておられるのかを教えてください。
世界遺産講座も世界遺産検定も、今後継続的に実施し、さらに上のランクに挑戦したいという方を応援していきたいですね。継続的な学びを通じて、将来的には受身で学ぶだけではなく、学んだことを自ら発信していくような人材が登場してくることを密かに期待しています。
世界遺産は世代を越えて話し合い、伝えることができるテーマだと考えています。ですから、まずは受講者同士が自発的にグループを立ち上げていただき、グループでのワークを通じて講座や検定で得た知識をさらに深め、今度は自ら講師となって、小学生や中学生などの若い世代にアウトプットしていく。このような機会がどんどん増えていけば、当センター設立の目的である地域活性化の理想的な形になるのではないかとイメージしています。世界遺産はまさにその形をつくりやすいテーマだと思いました。
「学び、伝えていく」生涯学習の風土を定着させることは、言葉で言うほど簡単なことではありませんが、まずは様々な方々と連携して取り組むことが大事であり、それが私たちの使命だとも考えています。
「茨城県県北生涯学習センターHP」
http://www.kenpoku.gakusyu.ibk.ed.jp/