学校法人 淑徳学園
淑徳SC中等部・高等部
英語科教諭 吉井 隆宏氏(左)・ 社会科教諭 保延 今日子氏(右)
―― 淑徳SCは2019年度よりユネスコスクール加盟校に登録されました。ユネスコスクールの概要と、加盟校になるまでの経緯を教えてください。
吉井 隆宏さん(以下吉井)/ ユネスコスクールとは、ユネスコ憲章に示された理念を実現するべく平和学習や国際的な連携を実践する学校のことです。国や民族を超えて理解し合うというユネスコの理念は、仏教系の学校である本校とも親和性が高く、ユネスコスクールへの加盟を希望しました。ユネスコスクールへ加盟するにはユネスコによる二段階の審査があります。まずは、加盟を希望する理由と自校のPRを英文で提出し、許可が下りれば1年間のチャレンジ期間が与えられます。次に、チャレンジ期間の1年間でユネスコスクールとしてふさわしい活動を実行し、どんな成果があったのかを論文で提出します。活動内容が認められれば、正式に加盟となります。
―― どのような活動が評価されたのでしょうか?
吉井/ ユネスコスクール登録を目指して何か特別なことをしたというわけではありません。ユネスコスクールには「持続可能な開発のための教育(ESD:Education for Sustainable Development)」の実践が求められています。以前より本校では「進みゆく世におくれなく 有為な人材になれ」という校訓のもと、世の中に必要とされる人材の育成に注力してきました。そのカリキュラムが自然とESDに則したものとなっており、日々の活動内容を文章にまとめて申請したところユネスコスクールとしてふさわしいとの評価をいただけました。
保延 今日子さん(以下保延)/ そのひとつが、世界遺産を題材とした探求学習です。具体的には、中等部1年目では自分の好きな世界遺産について調べる、3年目では世界遺産についてのレポートを英語で発表するなどしています。探求学習を始めたばかりの生徒たちが挙げる世界遺産は、観光地として有名な、華やかな場所がほとんどです。それが、学習を進めるにつれて遺産の持つ歴史や文化面に興味を持ったり、『原爆ドーム』のような負の遺産を通じて世界にあるさまざまな課題や価値観の違いに気づいていく姿には成長を感じます。
―― 中学生や高校生が世界遺産を学ぶことに、どんな意義があるのでしょう?
保延/ 世界遺産は歴史・宗教・民族・文化・自然などさまざまな面から価値が見出されます。「この世界遺産の価値は何だろう」と学ぶことで、多角的な視点から物事を見る力が養われるのではないでしょうか。文化遺産を日本史や世界史へリンクさせたり、自然遺産を地理や科学へつなげるなどさまざまな教科へ学習を発展させることも可能です。10代の多感な時期に世界遺産を学ぶことで、生徒の価値観や世界観が広がることを期待しています。
吉井/ 世界遺産検定についても、魅力を感じています。検定合格を目標とした学習や成功体験は生徒自身の達成感と自信につながります。また、推薦入学の際にも世界遺産検定の資格を持っているということは確実にアピールポイントになるでしょうね。
―― 今後、世界遺産教育をどのように発展させていこうとお考えですか?
保延/ 探求学習の成果を外部にも発信していきたいですね。個人的な希望ですが、WEBや学会などの場を活用し、生徒たちが学びの成果をより多くの人に向けて発表していくように環境を整えられればと思います。今後は、ますます女性の社会進出が進みます。次の世代のために「持続可能な社会」を築く責任もあります。そんな中で求められるのは、世界のさまざまな課題に対する当事者意識です。世界遺産の学習を通じ、世の中の出来事にアンテナを張って当事者意識を持つ、そんな「自律する女性」を育んでいければと思います。
吉井/ 今後求められる「グローバル人材」とは、語学が堪能なだけではなく各国の文化や風習について理解がある人物を指すようになっていくでしょう。そういった意味で、世界遺産の学習はグローバルな人材を育成するのにうってつけです。ぜひ、今後も積極的に教育の現場に導入していきたいですね。そして、世界遺産について学んだことは、資格取得という形で成就させたいと思います。本校ではまだ世界遺産検定は生徒や教員が個人的に受検している段階ですが、近々中等部・高等部の生徒のみならず教員からも希望者を募って団体受検を実施する予定です。ゆくゆくは検定の受検を卒業までの必須科目にするなど、より多くの生徒に受検をさせたいですね。
(2019年7月)