株式会社近畿日本ツーリスト首都圏
管理部
岩田 真琴氏
―― 第18回までの累計で、100名を超える認定者を出している株式会社近畿日本ツーリスト首都圏。世界遺産検定を資格奨励制度に入れて、どのような効果があったのでしょうか。
会社全体で世界遺産検定の資格取得に取り組んだことで、合格者も多くなりました。そこで名刺に世界遺産検定の級別ロゴを入れるようにしたのですが、これが一目で有資格者とわかる安心感でお客様に大変好評です。名刺をお渡しすると、ほとんどのお客様が「世界遺産検定の資格を持っているのね」と興味を示してくれるそうです。そこから会話が弾んで旅行の成約につながることもあるんですよ。今後は、テーマ性のある旅行のご相談を受ける専門サロンやセミナールームのある店舗を中心に世界遺産検定の有資格者を増やしていく予定です。
会社として積極的に取り組んでいる理由として、世界遺産を巡る旅行はとてもニーズが高く、細かいご相談に乗ることも多いからです。ですからお客様に満足のいくご提案をするために専門知識を持っていることは当然で、世界遺産検定の資格はその大きな支えになっています。プロとしてみんな一生懸命学び続けるわけですが、合格目標や知識のベンチマークがあった方が、スタッフも級別に段階を踏んで無理なく知識を深めていけるんですね。
また合格すると嬉しいですし、旅行好きにとっては楽しい勉強ですから次の級も受けたくなって向上心が芽生えるという(笑)。それに合格者には奨励金制度もありますから、受検しやすいですよね。合格したことで「お客様と応対するときの自信につながった」「自分自身が安心できた」という社員の心理的効果を評価する声もありました。営業所長の中に検定をなるべく社員全員に受けさせるという人が増えてきているのは、プロとして世界遺産や旅行全般の知識を持っているということが基本ラインだからだと考えています。お客様にとっても社員にとってもメリットは大きかったので、さらに受検者を倍増させていきたいです。
―― 団体受検をしてみていかがでしたか?
受検料の割引などもありますが、職場で受検できることや、受検可能日が何日かあって選択できることが、社員への負担も少なくなりありがたかったです。各々の都合に合わせて交代で受けられますし、丸一日休む必要もありません。また新人にも世界遺産検定受検をすすめているのですが「新人が3級受けるなら先輩の自分は2級を取っておきたいな。」と、切磋琢磨するムードが出てきたのがいいところですね。
―― 世界遺産検定と旅行の魅力とは?
私が行ってみたいのは、スペインのガウディ建築、サグラダ・ファミリア教会です。当社窓口で検定2級のスタッフに相談したら、同じガウディ建築でアントニ・ガウディ作品群の一つでもあるグエル邸や色鮮やかなタイル装飾のグエル公園も勧められました。それだけでなく安全なホテル、複雑な交通機関、信頼できる現地情報の確認や手配、隣国と一緒に回る旅もアドバイスしてくれたんですよ。世界遺産検定に向けて、3級では基本の118件、2級ではメインの318件、1級で全部の特徴・歴史・周辺地理・関連性などを学ぶので、必要な知識が身につきます。もちろん知識が全てではないですが、なしでは良いアドバイスはできません。
それに加えて経験豊かなスタッフなら、カウンセリングのように「その旅で本当にしたい、求めていること」を聞いてくれるでしょう。歴史を偲ぶのか、徹底して乗り物に乗れるだけ乗るのか・・・服は?食は?体験可能なイベントは?自分の好みを理解してもらい、それに沿った唯一無二の魅力的な旅を教えてくれるのは、知識が豊富で自分を理解してくれるスタッフであり、機械には決してできないことだと思います。
―― 旅行業界を目指す学生へのメッセージをお願いします。
学生として、時間のあるうちにできることを精一杯取り組んでほしいですね。旅行にしろ、資格を取るにしろ、思い立った時に色々チャレンジしてください。世界遺産検定は、知識量と情熱・根気がわかるのでアピールできるポイントの1つです。しかし知識だけではなく、最後に目指すのはお客様や同僚と心を触れ合わせ、一緒により良いものを努力して構築していける力。つまり、トータルでの人間力です。
お客様に感動してもらうには、スタッフの感動体験が大きな力を持つと思います。やらないで後悔したことは山ほどありますが、その逆は少ないと思いませんか? 私にとって、「行かなくてよかった旅」は1つもありません。この業界に入るのでなくとも、たくさんのことを体験してそこから学んだものは、就職活動時だけでなくその後もずっとご自分の支えになると思います。
(2015年1月)