■研究員ブログ227■ 第48回世界遺産委員会が始まります!

第64回世界遺産検定も終わり、いろいろと話題のあったサッカーのワールドカップも決勝戦を残すところとなり、ようやく世界遺産委員会の話題にしっかりと向き合えるようになりました。

今週末の7月19日(日)から、第48回世界遺産委員会が韓国の釜山で始まります。韓国はここのところ韓国文化の保護と発信に力を入れており、世界遺産を含む文化財も、K-POPや食文化などと共に「K-HERITAGE」として国家にとって重要なものと位置付けています。そうした背景もあり、今回は韓国で初めて開催される世界遺産委員会となります。議長を務めるのは、韓国の元外交官のイ・ビョンヒョン氏です。書記はジャマイカのアシュリー・ジョーンズ氏が務めます。

今回の注目は、やはり2年ぶりに日本から新しい世界遺産「飛鳥・藤原の宮都」が登録される可能性が高い、ということだと思います。これは登録勧告も出ているので、おそらく大きな議論になることもなく安心して見ていられます。

今回、新規登録に向けて審議される遺産は、「飛鳥・藤原の宮都」を含めて30件(文化遺産22件、自然遺産7件、複合遺産1件)です。ここには緊急的登録推薦で審議される2件(文化遺産1件、自然遺産1件)も含まれています。

この30件に出されている勧告は、登録勧告20件、情報照会5件、登録延期勧告3件、不登録勧告2件です。前回の世界遺産委員会の勧告が少し厳しめだった印象があるので、今回は登録勧告の割合が多く感じます。緊急的登録推薦の2件にはどちらも登録勧告が出されています。

この他に、登録範囲の拡大が韓国の『ゲボル:韓国の干潟(第二段階)』(2021年登録)とドイツの『ベルリンのモダニズム公共住宅』(2008年登録)の2件で、どちらも承認の勧告です。「ゲボル」はシリアル・サイトとしての価値をもつ遺産を、複数年かけて登録していくというものです。

また今回珍しいのが、登録基準の変更を申請している『ガランバ国立公園』です。登録基準(vii)(x)だったものを(ix)(x)に変更しており、これにも承認の勧告が出ています。

今回、新しく世界遺産保有国となる可能性がある国が、コモロとサントメ・プリンシペ、南スーダンの3カ国で、サントメ・プリンシペの「サン・トメとプリンシペのロサ(農園)群:植民地農業システムと強制移住」だけが情報照会勧告で、残りの2件は登録勧告です。サントメ・プリンシペの遺産は負の側面をもつ遺産と考えられます。南スーダンの「ボマとバディンギロにおける動物の渡りの景観」は緊急的登録推薦の遺産です。

世界遺産登録にも流行りがあり、文化的景観は少し落ち着いてきて今回は2件のみ。一方で「記憶の場」に関する遺産は今回もフランスの「ノルマンディー上陸作戦の海岸群(1944年)」が入っています。これは「記憶の場」を世界遺産の審議の対象とするかどうかの、議論のきっかけとなった遺産のひとつです。

今回はウクライナが副議長国に入っていることもあり、ロシアが実効支配しているウクライナの『タウリカ半島の古代都市とチョーラ』などに危機遺産リスト入りが勧告されている他、緊急的登録推薦で出されているパレスチナの「セバスティア」もイスラエルの軍事侵攻関連です。紛争に関連して遺産の保護が十分に行われない遺産が近年の大きな課題だと言えます。紛争関連ではないですが、『佐渡島の金山』に関する遺産説明の改善勧告なども出される見込みで、これは韓国が議長国だということとも無関係ではありません。日本は今回から委員国を外れているので、この勧告も決議される可能性が高いです。

UNESCOは、政治的な所を国連に任せて、文化的な活動で協働することで平和な世界を目指す組織なので、政治的な話題や遺産価値やその保護から離れた議論は敬遠される傾向にはあります。今回はどのような審議になるかわかりませんが、OUVとの関連の中でどのような議論となるのか見ていきたいと思います。

新しい事務局長の下で迎える世界遺産委員会。前回とはまた異なる雰囲気になりそうなので楽しみです。皆さんもぜひ議論にご注目ください!

(2026.07.17)