認定級 マイスター
細野 芽萌里さん
高等学校教員
―― 細野さんは、これまでどのようなキャリアを積まれてきたのでしょうか?
大学を卒業後、国内の航空会社でグランドスタッフを約1年間経験しました。もともと海外旅行や外国の文化が好きだったのですが、働いているうちに「もっと広い世界を知りたい」という思いが抑えきれなくなり、会社を退職。バックパッカーとして南米やアジアを中心に世界を旅しました。バックパッカー時代はさまざまな国や観光地を見て回ったのですが、その過程でよりグローバルな舞台で仕事をすることに惹かれ、「今度働くときは海外で働こう!」と考えるようになりました。
帰国後は、海外で仕事ができる会社に絞って就職活動をしていましたが、外資系の航空会社にご縁をいただくことができました。国際線の客室乗務員の募集を偶然目にし、なんとなく応募してみたところ、幸運にも内定をいただけたのです。正直なところ、自分が客室乗務員になるとは就職が決まるまでうまくイメージできませんでした。いざ仕事に就いてみると、世界を舞台に、さまざまな国の方と交流しながら働ける仕事であることを実感し、非常にやりがいを感じられました。
次に転機が訪れたのは、新型コロナウイルスの流行が始まった2020年です。私が勤務していた航空会社でも新型コロナウイルスの流行を受け、国際線のフライトはほとんどすべて中止に。自宅待機の日々が続きました。そんな折に耳にしたのが、埼玉県教育委員会が民間企業経験者を対象に英語の教員を募集しているという情報です。英語教員であれば、これまで自分が培ってきた語学力や海外を見て回った経験が活かせるのではと思い、転職を決意。採用試験を経て、2021年4月から県立川越女子高等学校に英語教員として勤務しています。
―― 世界遺産検定は大学生の頃に1級まで取得し、それから8年後の2020年12月にマイスターに合格されています。世界遺産検定を受けたきっかけは何だったのでしょうか?
世界遺産検定の存在は、旅行好きの母から教えてもらいました。母がすでに2級に合格していて、「面白いから、あなたも受けてみなさい」と勧めてくれたのです。世界遺産の勉強は楽しかったですし、観光業界への就職を希望していたこともあって大学在学中に1級まで取得しました。
マイスター試験を受検しようと思ったのは、コロナ禍での自宅待機がきっかけです。大学生の頃から、いつか挑戦したいと思いつつ後回しにしてしまっていたマイスター。フライトが無い、時間がたっぷりあるときだからこそ何かに挑戦しようと思いマイスターの受検を決めました。マイスター試験の1カ月後に教員採用試験の面接と論文が控えていたのですが、一石二鳥だと思い論文の書き方は徹底的に勉強しました。採用試験の面接では世界遺産検定を取得していることで国際的な文化への理解があることをアピールできましたし、検定のおかげで論文と面接が上手くいったと言っても過言ではありません(笑)。
―― これまでのお仕事の中で、世界遺産の知識や各国を回った体験をどのように役立てていますか?
航空会社に勤務していた頃は、さまざまな国の方と接するときに世界遺産がコミュニケーションのきっかけになりました。「あなたの国にはこんな遺産がありますよね」と言うと、「私の国のことを知ってくれているんだ!」と喜んでもらえましたね。
教員になってからも、世界遺産の知識は大いに役立っています。高校の英語の教科書では、外国に関する話題が出ることが多いのですが、そんな時には世界遺産の知識を絡めながら、その国がどんな国なのか生徒に解説するようにしています。
世界遺産は歴史や文化だけでなく自然地理や人文地理にも知識が広がります。どのジャンルの話題であれば生徒が教科書に登場した国、教科書の内容に興味を持つのか……世界遺産はさまざまな切り口を考えるためのヒントになっています。自分が訪れた国であれば、現地で撮影した写真をスライドで見せることもあります。「有名な世界遺産がある国」や「先生が訪れたことのある場所」としてその国を紹介すると、生徒たちもイメージがわきやすいようです。
また、夏休み中に実施した補講では、各グループが好きな世界遺産を選び、それについて英語でプレゼンするという授業をしました。授業に先立ち、世界遺産の理念のレクチャーや自身が訪れて印象に残っていたキューバやインドの世界遺産を紹介したのですが、「世界遺産の存在が世界平和につながっている」という考えは生徒たちにとって新鮮だったようで「世界遺産にはそんな意味があるんだ」と驚いてくれました。
―― 世界遺産を取り上げると、英語のみならず社会科も学べる教科横断型の授業が実現できますね。
授業に世界遺産を取り入れた目的のひとつは、コロナ禍の真っただ中で少しでも生徒たちに旅行気分を味わってもらいたかったからです。もうひとつは、世界遺産を通じて宗教や文化、歴史などに関するさまざまな気づきを生徒たちに与えたかったということがあります。
英語の授業は、英語を学ぶだけではなく、これからのグローバル社会を生きていくうえで必要な力を育むためのものです。生徒たちにとって、私の英語の授業が単に語学を学習するだけの時間ではなく、世界にはさまざまなバックグラウンドを持つ人々がいることを知り、理解するための時間になってほしいと思います。その一助として、これからも検定で得た知識を大いに役立てていきたいですね。
(2022年1月)